語り場ガイナビーツ

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ゴジラはなぜ野村萬斎なのか

シン・ゴジラゴジラモーションキャプチャを演じたのが能楽師野村萬斎さんであることは既に皆さんご存知の通りだと思います。映画のエンドロールでも出演者としてきちんとクレジットされていました。知らなかった方は「どこにでてたの!?」と驚いたことでしょう。

 

しかし疑問が浮かびます。なぜ野村萬斎さんがゴジラを演じたのでしょうか?

 

『必要なのはゴジラの動き。それならただ単に、そこらへんのスタッフに「ゆっくり動いて!」と言えばいいのでは?』と考えてしまいます。単純にそれでいい気もします。ですが、あえて「能楽師」の動きにこだわる理由があるのです。

 

その答えは2006年にNHKで放送された「私のこだわり人物伝  円谷英二-特撮の神様-」の第一回「ゴジラは日本人である」に隠されています。

 

ゴジラは日本人である」では、円谷英二が影響を受けたアメリカ制作のモンスター映画「キングコング」と対比させて、円谷英二ゴジラに対する制作の姿勢が語られます。その中で「何故、ゴジラはゆっくりと歩くのか?」について触れられます。

 

キングコングで取られた制作の手法は「コマ撮り」でした。格闘するキングコング、のしのしと歩く恐竜、空を羽ばたく翼竜。それらは人形を動かして撮影してを繰り返すコマ撮りで取られました。コマ撮りはスピーディーでリアルなシーンを作ることができるのです。

 

しかし円谷英二をはじめとするゴジラ制作陣は着ぐるみを選びました。予算や制作期間の都合でそうなったとも言われていますが、やはりミニチュアであることで失われてしまうリアリティがあったからです。スピーディーであるがゆえに重量感が失われ、生物としての存在感が無くなってしまうのです。

 

着ぐるみでの撮影。東京を歩くゴジラはゆっくりと歩きます。足の裏を見せずに歩く重量感のある動き。奥ゆかしさすら感じるこの存在感。

 

この動き、「能」に似ているとは思いませんか?ゴジラはすり足で歩いていたのです。

 

 

 

そして、時代は変わりシン・ゴジラへ。CG技術が発達し、着ぐるみで能の動きを真似る必要は無くなりました。モーションキャプチャを使うことで本物の能の動きを取り入れられるようになったからです。劇中で東京を歩くゴジラは重く、ゆっくりと歩いていました。実に62年の時を経て、ゴジラは理想とされた完璧な歩行を手に入れたのです。

 

ゴジラ野村萬斎さんである理由。それは、原点のゴジラが目指した最高の重量感と存在感を実現するためだったのです。